ホームレス支援全国ネットワーク」は、ホームレス支援活動の相互の連絡、連携等を図るため支援団体および個人による全国的なネットワークを目指して設立されました。

ホームレス対策の現状と課題

 場所によって差はありますが、一般的にいえば、日本各地で、公園や路上等で野宿を余儀なくされる人々が目立つようになったのは1993(平成5)年ころからで、1996年以降は、人道上の観点から、あるいは公共空間の管理の視点で「問題」として取り上げられることが多くなり、民間団体の支援活動や行政の動き(野宿生活上の困難の緩和策、あるいは公共空間からの追い立て等々)も活発になります。
 失業・貧困問題は、地方自治体の手に負える問題ではなく、国が解決に乗り出すべきだという声も高まり、野宿生活者が増え続ける現実もあって、法律が制定されるにいたりました。「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(2002−平成14−年8月7日 法律第105号)」がそれです。(国等は野宿を余儀なくされている人々を「ホームレス」と表現しています。)
 法に定められたところにより、国は対策の基本方針「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(2003−平成15−年7月31日 厚生労働省・国土交通省告示第1号)」を定め、野宿生活者が多く存在する県と地方自治体は、それをもとに「実施計画」を策定しました。
 その法律によって、これまで2回、全国の野宿生活者の概数と実体についての聞き取り調査が実施されています。
調査が、おこなわれたのは、2003(平成15)年1〜2月と、2007(平成19)年1〜2月で、それぞれ報告書が発表されています。
 国・厚生労働省が地方自治体を通じて把握した「ホームレス」の概数は、夜間調査をしていない自治体が多いこと、冬場の調査であることなどから、実態よりも少なめであると見なされています。
 また、全国約2千人の聞き取り調査も、大都市からの聞き取り調査数の占める割合が、概数把握の分布からすると過大となっており、小数点在地域の事情が反映されにくい実態調査であったと見なされています。
 概数調査結果は、2003(平成15)年の場合、3,240市区町村全てで調査が行われ、581市区町村で合計25,296人が把握されました。府県でいえば、全都道府県で「ホームレス」が把握されました。
 2007(平成19)年は、市区町村数が合併推進で大幅に減少し、1,837市区町村全てで調査し、552市区町村18,564人が把握されました。
 2007(平成19)年の概数は、前回概数より、6,732人(26.6%)減少したことになります。
 実態調査結果を比較すると、平均年齢は、57.5歳で前回より1.6再上昇し、野宿期間は、「5年以上」の占める割合が、前回24.0%から41.4%へと増えて、高齢化・長期化を示しています
 全国の野宿者数は減少していますが、全ての自治体で同じように減少したわけではありません。自治体の「ホームレス対策」は、国庫補助事業と自治体単独事業がありますが、自治体単独事業をおこなっているのは、「ホームレス」が確認された552市区町村のうち65市区町村(11.8%)にすぎません。
 ホームレス施策を行っている自治体の概数の合計は、前回より30%減少していますが、ホームレス施策を行っていない自治体の概数の合計は、前回より8%減少しているにすぎません。
 ホームレス施策を全く行っていない自治体が多いことは大問題ですが、自立支援センターや相談事業などの施策の実施は、概数の推移を見る限り、それなりの効果を上げているといえますが、高齢化・野宿の長期化がなぜ生じたかを考えれば、大きな見直しが必要であるといえます。
 「ホームレス対策」の国予算は、平成19年度は約32億8千万円でした。「ホームレス」の多い自治体に補助金として支出され、当該自治体の総合相談や自立支援センター運営などの事業費の一部にあてられています。
 「総合相談事業」は、全国で16市と10広域ブロック(1都1府5県)で実施され、平成15年から平成18年の4年間で139,844件の相談を受け、関係機関につないだ数は19,469件(13.9%)であったと報告されています。
 平成15年概数と平成19年概数を比較すれば6,732人の減少であったのですが、それを上回る人々が、相談事業を通じて何らかの公的支援を受けたことになります。このことは、日々新たに野宿生活を余儀なくされる人が存在すること、関係機関につなぐものの野宿を脱するまでの支援が受けられなかった人が多数存在することを示しています。
  最後のセーフティネットといわれる生活保護ですが、最近は、申請を断られての、あるいは辞退させられての自殺や餓死のマスコミ報道に接することも少なくなく、うまく機能していないように見受けられます。
 野宿を余儀なくされている人々にとっても、最後の望みの綱であるわけなのですが、昨年1年間の実施状況を見ると、やはり、うまく機能していないといわざるをえません。
 厚生労働省がとりまとめたところによると、平成18年1月1日から12月31日までに、「ホームレス」に対しての生活保護適用件数は、30,298件、年末現在までの継続は、11,593件(平成19年1月の野宿生活者の概数は18,564人と発表されています。実際何人の野宿生活者がいるのでしょうか)、廃止の件数は18,705件、なんと平成19年1月の野宿生活者の概数よりも多い。
 多くの人は、廃止の件数を見て、「やはり野宿生活者は気ままだから、面倒みがいがない」と思うかも知れません。
 しかし、一般に想像される生活保護は、アパート等で家賃と生活費の支給を受けて生活するというものでしょうが、「ホームレス」に適用される生活保護はそうではありません。一般に想像される生活保護は、「居宅保護」といいますが、一般住宅における保護は、全体の8%、2,390件にすぎません。
 一番多いのが、入院です。30,298件の38%(11,467件)を占めています。体の調子がよくなれば、もう一度路上に戻るだけです。
 2番目に多いのが、無料低額宿泊所です(24%)。宿泊所ですから、定住を前提にしていません。
 せっかく公的制度に結びつきながら、安定した生活にいたるまでのきちんとした支援がないために、むざむざ路上に戻ることが続いていることは、無惨としかいいようがありません。
 厚生労働省は、77市区町村に、153の「ホームレス」支援を行うNPO・民間団体があると把握しています。
 「ホームレス」支援を行うNPO・民間団体が存在する77市区町村のうち、曲がりなりにもそれらの団体と連携しているのは48市区町村に過ぎません。
 不安定な雇用形態で働く人々が増え、「貧乏」が世襲になりかかっている今の世だからこそ、野宿予防も含めた広い視点での支援活動を行う団体の存在とそれを支える行政の施策が必要だと考えています。

 
ブログのページ に、「ホームレス対策」の状況を、厚生労働省発表資料を基に府県ごとにまとめたものがあります。


*2007年6月25日 厚生労働省へ基本方針見直し提言提出
今年は、
20028月の「ホームレスの自立支援等に関する特別措置法」(以下「自立支援法」)が公布・施行され5年目になります。自立支援法は10年間の時限立法であり、施行後5年で基本方針を見直すこととされております。本年2007年度秋には基本方針見直し作業が開始され、来春には新しい基本方針が発表されようとしています。
 当ネットワークは、全国の意見をまとめ、見直しに当たっての意見・要望を厚生労働書へ提出しました。
提出した要望書は、これです。