活動案内
2011年度活動方針
2011年3月に厚労省より発表されたホームレス人数は、2003年の最初の全国調査に比べ14,406人減の10,890人となった。路上の人数は当初の(2003年比)4割となり、自立支援の効果が一定現れたと言える。
一方で2008年のリーマンショック以後、生活保護の運用が見直され、路上状態からの保護活用が可能になったことも、ホームレス人数現象の大きな要因となっている。
生活保護については、被保護者の数が1995年約89万人だったのに対して現在は200万人を突破した。そもそも「捕捉率」(生活保護基準以下の生活者の内の生活保護受給者の割合)が極端に低い現状であったので、潜在的な困窮者層が保護を申請したという見方もできるが、やはりリーマンショック以後困窮者が増加しているのは、皆が実感しているところだと思う。
生活保護運用がこれまでに比べ「適切」に行われ、また第二のセーフティネットなどの施策も細々とながらも活用できるようになり、このことが長期の路上生活を余議なくされる方が減ったことの要因となっていることは事実であろう。しかし、問題は、この路上生活者の減少が「困窮者の減少」を意味しているわけではないという点にある。
ホームレス自立支援法は、「ホームレス」を野宿者と限定している。すなわちホームレス自立支援法における「困窮者」概念は、「路上の人々」ということになる。保護利用等で路上からの脱出がより可能になり、結果ホームレス人数が減ったが、保護世帯の増大は、決して困窮者そのものの減少を意味していないことをキチンと認識したいと思う。
そもそも2002年の法制定の当時、現在のように生活保護が活用できる事態は想定されておらず、自立支援センター等を利用することが「一本道」のように前提とされていた。しかし現在は、生活保護利用と自立支援法利用の「二本道」の状態となっている。この「二つの道」をどのようの有機的に関連づけるのかが大きな課題となる。
かつて議論された「生活保護かホームレス自立支援法か」という二者択一ではなく、困窮者に対する二つの支援の枠組みをどのように組み合わせ、活用できるかが問われている。入所施設である自立支援センターの設置がなされなかった地方におけるホームレス支援の現場にとっては、生活保護による居宅をはじめとする生活基盤の整えをした上で、ホームレス自立支援法がどのように活用できるかが、今後の課題となる。
このことにおいては、生活保護法自体を見直すことも視野に入れなければならない。「最後のセーフティネット」は必然である。だが、すべてを失う前に、生活保護の目的にある「自立の助長」のための保護活用の枠組みを構築すべきである。従来の「現金支給」のみではなく、就労訓練を兼ねた社会的もしくは公的就労などを国がつくり、その労働に対する対価として保護同額を支払うような仕組みが出来ないかと思う。
現在始まっている生活保護見直し議論が、単なる「保護抑制」に終わり、さらなる困窮者を生み出す結果となるのか、それとも生存権を保障すると同時に、人間の尊厳を取り戻すための制度となるのかについて、全国ネットとしても意見表明をしていきたい。「有期給付」などの議論が新手の「水際作戦」とならないように政府の動向を注視したい。
また、景気の動向は、先行き不透明の現状が続いている。2008年のリーマンショックで最大に落ち込んだ雇用も、その後ゆるやかな回復を見せていた。しかし、90年代に国際競争力を高めるための「景気の安全弁」として登場した「非正規雇用」や「派遣社員」という労働形態自体はそのままであり、今後もこのような不安定な就労が困窮状態に置かれた者たちの受け皿になっていくことになると思われる。雇用者側の責任がキチンと果たされることを求めたい。
このような事態の中で東日本大震災が起こり、一旦緩やかに回復していた有効求人倍率が4月になって下降し始めている。「復興景気」に対する期待もあるが、そもそも震災によって大量に発生した失業者が、今後最困窮状況に陥らないように注意しなければならない。政府が現在すすめている「被災者雇用」を一定評価しつつも、震災前にすでに失業状態にあった困窮者の就労等の自立支援が後回しになることがないように注意していきたい。
昨年、全国ネットワークとしては、厚生労働省からの調査研究事業として三つの調査を行った。その中の「広義調査」において明らかになったのは「ホームレスとは誰だったのか」という実態と同時に、戦後の日本社会のさまざまな社会保障制度等が機能していない実態であった。障害福祉や教育など、路上状態になる前に本来機能すべきセーフティネットが機能しておらず、最終的にホームレス支援の現場にあらゆる複合的な困窮を抱える困窮当事者を支援している現状が見えてきた。
来年夏、自立支援法が期限を迎えようとしている。私たちは、ホームレス支援の今後の在り方を模索すると同時に、日本社会全体の新しいあり方についても、議論しなければならない時を迎えている。路上からの視点、最困窮状態に置かれた者の視座に立ち、そのような議論を進めたいと思う。
このような中にあって、全国ネットワークからの政策提言が持つ意義は高まっている。現場での出会いと実践の積み重ねの中からだけ生み出される視点と発想をもって、今後の日本のホームレス支援、困窮者支援の方向を常に示す者でありたいと思う。そのためにも加盟団体の増加を目指し、組織強化に向けた取り組みを進めたい。
全国ネット9つの取り組み
- ホームレス状態に置かれた人々のいのちと権利が守られるための支援を行う。
- 「自立支援法」を活用しつつホームレス支援活動を行う。
- 国の行うべき自立支援やこれからの社会の在り方についての提言を行う。
- ホームレス支援を推進するために行政との協働を含む、より広範な協働を目指す。
- 「路上からの脱出」を自立支援の課題として取り組む。
- 自立後の継続的な支援を行う。
- 就労自立のみならず福祉活用型自立(半就労・半福祉型含む)など、多様な自立支援の在り方を模索する。また、自立を経済的側面に限定せず全人的課題として捉える。
- ホームレスにならないための支援を行う。
- 諸団体では対応できない課題については独自の事業を展開する。
活動報告
会計報告
NEWS
- ¥ 27,121,155
- (2012.2.16 update)